子どもの銀行口座は、作った瞬間ではなく「子ども自身が窓口へ行った瞬間」から意味を持ちます。
私が自分名義の通帳を持ったのは、小学校低学年のときでした。お正月が明けると、もらったばかりのお年玉を握りしめ、一人で地元の信用金庫の窓口へ向かう。それが我が家のやり方でした。
第2回 教室の廊下が金融機関|昭和の学校貯金に学ぶ先取り貯蓄と自動積立では昭和の小学校で行われていた「学校貯金」についてお話ししました。毎月欠かさずお金を預ける行為は、私の金銭感覚の土台となりました。しかし小学校低学年になった頃、私はもう一歩、大人に近い「お金の管理」を体験することになります。
この記事の要点
- 小学校低学年で、地元の信用金庫に自分名義の口座を作ってもらった
- お年玉を持って一人で窓口へ行くのが決まりだった
- 通帳は紛失防止のため母が保管。保管は親、行動は子どもという線引き
- 貯金箱とは違う「背筋が伸びるような緊張感」が、お金への責任感を育てた
- ネット銀行の時代でも、自分の意志で預け先を選ぶという本質は変わらない
歩いて行ける「大人の入り口」だった地元の信用金庫
私の育った地域で、歩いて行ける距離にある金融機関といえば、郵便局と農協、そして地元の信用金庫の3つだけ。その中でも、自宅から一番近い場所にあったのが、その信用金庫でした。
「お年玉は、これからはここへ預けに行きなさい」
そう言って親が作ってくれたのは、私の名前が刻まれた自分だけの通帳。キャッシュカードなんてまだ持っていない時代です。お正月が明けると、私はもらったばかりのお年玉を握りしめ、自分一人でその信用金庫の窓口へと向かいました。
窓口で味わった緊張感|貯金箱とは違う「預ける」体験
重厚な扉を開け、カウンターで通帳と現金を出す。保育園の頃、自宅の貯金箱でお金を貯めていた時とは全く違う、背筋が伸びるような緊張感がありました。
窓口の職員さんが手際よく手続きをしてくれ、返ってきた通帳を開くと、そこには新しい預け入れの数字が刻印されています。
「これでお金が守られた」 「自分の資産が、この通帳の中に積み重なっていく」
その数字の重みを感じながら、大切に通帳を家まで持ち帰ったことを今でも鮮明に覚えています。
同じ「貯める」でも、貯金箱と口座では体験がまったく違います。 貯金箱は自分の部屋で完結しますが、口座は他人が介在し、社会の仕組みに接続する行為だからです。
親がくれた「信頼」という名の教育
通帳自体は、万が一の紛失を防ぐために母が大切に保管してくれていました。しかし、お年玉をどう管理するか、そして自分の足で窓口へ行くという行為については、親は私を全面的に信頼して任せてくれました。
| 親が担ったこと | 子どもに任せたこと |
|---|---|
| 口座を開設する手続き | お年玉をどう管理するか |
| 通帳の保管(紛失防止) | 自分の足で窓口へ行くこと |
| 窓口で通帳と現金を出すこと |
「子供だからまだ早い」と取り上げるのではなく、自分のお金に責任を持たせてくれたこと。この親の姿勢には、今でも深く感謝しています。
もしあの時、お年玉がただ「親に預けて消えてしまうもの」であったなら、今の私のお金に対する主体性は育っていなかったかもしれません。
子どもの銀行口座はいつから作るとよいか
年齢そのものより、子ども自身が「預けに行く」役割を担えるかどうかが目安になると考えています。私の場合は小学校低学年でした。
口座を作るだけなら生まれてすぐでも可能です。しかし親が入金し、親が通帳を見ているだけでは、第1回で書いた貯金箱の体験と同じものは得られません。大切なのは次の2点です。
- 子ども自身が窓口に立つこと — 他人にお金を渡し、記帳された数字が返ってくる。この一連の流れを体験させる
- 危険な部分だけ親が引き受けること — 通帳の保管は親が担いました。任せる範囲と守る範囲を分けておけば、安心して主体性を渡せます
ネット銀行の時代でも変わらない本質
現代はネット銀行の普及で、スマホ一つで24時間いつでも入金や投資ができる便利な時代です。わざわざ寒い中、お正月明けに窓口へ行く必要はありません。
しかし、「自分のお金を、自分の意志で、確かな場所へ預ける」という本質は、今の資産運用でも全く同じです。
- どこに預けるのが自分にとって一番良いのか。
- 増えた数字を見て、何を思うのか。
地元の信用金庫まで歩いたあの短い道のりは、私にとって「自分の資産に責任を持つ」という、心構えの第一歩だったのだと改めて感じています。
よくある質問
Q. 子どもの銀行口座は何歳から作れますか?
口座の開設自体は0歳からでも可能です。ただし教育という観点では、子ども自身が窓口に立てる年齢が本当のスタートだと考えています。私の場合は小学校低学年でした。
Q. 通帳やキャッシュカードは子どもに持たせるべきですか?
我が家では通帳は母が保管していました。紛失のリスクは親が引き受け、預けに行くという行動だけを子どもに任せる形です。すべてを渡す必要はありません。
Q. お年玉は親が預かってしまってよいのでしょうか?
「親に預けて消えてしまうもの」になると、お金への主体性は育ちにくくなります。預かるにしても、子ども名義の口座に入り、記帳された数字として本人が確認できる状態にしておくことをおすすめします。
Q. ネット銀行では同じ経験をさせられませんか?
入出金の記録が残る点は同じですが、他人にお金を手渡す緊張感は生まれません。可能であれば、最初の一度だけでも窓口を経験させると印象に残りやすいと思います。
まとめ:自分の足で「預けに行く」という第一歩
貯金箱から口座へ。場所が変わっただけに見えて、そこには「自分のお金に責任を持つ」という大きな一歩がありました。
親が与えてくれたのは通帳そのものではなく、自分で管理してよいという信頼だったのだと思います。
※本記事は個人の経験に基づく内容であり、特定の金融商品や金融機関を推奨するものではありません。


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