どこが「底」なのかは、誰にも分かりません。 私はそれを、投資デビューからわずか2週間で思い知らされました。
これまで着実に預金や財形、国債で資産を積み上げてきた私ですが、2008年、ついに投資信託という未知の世界へ一歩を踏み出す時がやってきました。
しかし、そのデビューは、まさに嵐の中での船出となりました。
※時系列では、第21回の外貨預金(2010年)よりも前の出来事です。
この記事の要点
- 2008年9月1日、郵便局の窓口で勧められた投資信託を50万円分購入
- 購入時手数料は1.65%、信託報酬は年0.759%(税込)
- わずか2週間後の9月15日、リーマン・ブラザーズが破綻
- 評価額は2割ほど減少。「安く買えるチャンス」と考え、10月にさらに50万円を追加
- その後も価格は下がり続け、長期間の元本割れに。完全な失敗だった
2008年9月1日、郵便局での勧め
当時、私はボーナスなどのまとまった金額を郵便局(ゆうちょ銀行)に預け入れていました。ある日、窓口で「預金だけでは増えない時代ですから」と勧められたのが、「野村世界6資産分散投信(分配コース)」でした。
この商品は、日本と海外の「株式・債券」に加え、「REIT(不動産投資信託)」という資産を組み込んだものでした。プロが大規模なオフィスビルや商業施設を購入し、その「家賃収入」を投資家に分配する仕組みで、個人でも少額から大家さんになれるという点に魅力を感じました。
私は分配金を再投資する設定で、まずは50万円分を購入しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商品 | 野村世界6資産分散投信(分配コース) |
| 購入日 | 2008年9月1日 |
| 購入額 | 50万円(10月に50万円追加、計100万円) |
| 購入時手数料 | 1.65% |
| 信託報酬 | 年0.759%(税込) |
購入時手数料として1.65%(1万円近く)がかかり、保有中には年0.759%(税込)の信託報酬が発生する条件でしたが、当時は「窓口でプロのサポートを受ける必要経費」と納得してのスタートでした。
最終的に100万円を投じたので、購入時手数料だけで合計1万6,500円。 買った瞬間に、それだけのマイナスからのスタートだったことになります。
わずか2週間後、世界が変わった
購入日は2008年9月1日。しかしそのわずか2週間後の9月15日、アメリカの証券大手リーマン・ブラザーズが破綻し、「リーマンショック」が世界を襲いました。
不動産バブルの崩壊が引き金だったこともあり、REITを含む私のファンドは直撃を受けました。
評価額は瞬く間に2割ほど減少。初めての投資で、いきなり10万円近くが画面上から消えてしまったのです。
「安く買える」という逆転の発想と、強気の買い増し
普通なら「二度と投資なんてしない」と解約してもおかしくない場面です。しかし、当時の私はどこか強気でした。
「評価額が下がったということは、同じ金額でより多くの口数が買える。今が一番安く買えるチャンスなんじゃない?」
そう考えた私は、翌10月、さらに50万円分を追加購入しました。あえて今度は「分配金受け取りタイプ」を選び、暴落の最中に合計100万円を投じるという、自分なりに計算した「逆張り」の決断をしたのです。
「果敢な逆張り」の結末:長く続いた元本割れ
「下がりきったところで買ったのだから、あとは上がるだけ」――そう信じていた私を待っていたのは、甘い現実ではありませんでした。
世界的な金融不況の波は想像以上に深く、長く重くのしかかりました。追加購入した後も価格は下がり続け、その後も延々と元本割れする状況が続くことになったのです。
「安く買い増したはずなのに、一向に元本に戻らない……」
毎月届く運用報告書を見るたびに、ため息が出ました。高い購入手数料を払い、信託報酬を引き落とされながら、減っていく資産をただ眺める日々。
知識が浅いまま「暴落=チャンス」と安易に飛びつき、勢いで買い増しをしてしまったこの逆張りは、正直に言って完全な「失敗」でした。
リーマンショックで学んだ3つの敗因
この苦い体験によって、私は投資の厳しさを骨の芯まで叩き込まれました。
| 敗因 | 内容 |
|---|---|
| 落ちてくるナイフを拾う怖さ | どこが「底」なのかは誰にも分からず、勢いで逆張りをしても底なし沼にハマるだけ |
| コストの重み | 元本割れで苦しい時ほど、購入手数料や信託報酬といった「目に見えないコスト」がズシリと響く |
| 商品選びの難しさ | 毎月分配型や複雑な多資産ファンドは、暴落時のリカバリーが難しい |
特に2番目は、身をもって理解しました。値上がりを待つ間も、コストは毎日引かれ続けます。 プラスに戻るまでのハードルが、最初から手数料の分だけ高く設定されていたのです。
同じ失敗を避けるための3つの確認
いま同じ場面に戻れるなら、私はこの3つを先に確認します。
- 買う前にコストを合計する — 購入時手数料と信託報酬を、投資額に対する金額で出しておく。%のままだと軽く見えてしまいます
- 「安くなった」を買う理由にしない — 下がったことは、上がる根拠にはなりません。私はここを取り違えました
- 一度に判断しない仕組みにする — まとまった額を勢いで動かしたことが失敗の本体でした。時期を分けるだけで、判断の重みは軽くなります
よくある質問
Q. 暴落したときに買い増すのは有効ですか?
私は失敗しました。「安くなった」ことと「これから上がる」ことは別の話です。追加購入したあともさらに下がり続け、長く元本割れが続きました。底がどこかを見極めるのは、私には無理だと痛感しました。
Q. 購入時手数料はそれほど大きな影響がありますか?
私が支払ったのは1.65%、100万円で1万6,500円です。買った瞬間にその分マイナスから始まるということでもあります。元本割れの局面では、この差が重くのしかかりました。
Q. 毎月分配型の投資信託はよくないのでしょうか?
一概に否定はできませんが、私には合いませんでした。 分配金を受け取るタイプを選んだことで、値下がりからの回復がさらに遠のいたと感じています。仕組みを理解したうえで選ぶことが大切だと思います。
Q. 元本割れした投資信託はどうすればよいですか?
私は長く保有し続けました。正解が一つあるわけではありませんが、慌てて判断しないことは言えると思います。ただし、コストの高い商品を持ち続けることの負担は、あらかじめ理解しておくべきでした。
まとめ:この失敗が、次の道を決めた
教科書通りの「逆張り」を気取って大失敗し、長期間の元本割れに耐えることになった2008年の秋。
しかし、この手痛い挫折があったからこそ、私はのちに「低コストのインデックスファンド」や「積立投資」という堅実なスタイルへと舵を切ることになるのです。
高い授業料でしたが、コストと向き合う目はここで育ちました。
次回予告|第24回 元本割れの大暴落から9年|塩漬けと特別分配金の教訓は、この後に続いた長い忍耐の話です。5年近く元本を割ったまま届き続けた「特別分配金」と、9年がかりの出口についてお届けします。
※本記事は個人の経験に基づく内容であり、特定の金融商品を推奨・否定するものではありません。記載の商品名・手数料・信託報酬は2008年当時のもので、現在の内容とは異なります。投資信託は価格変動により元本を割り込む可能性があります。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。


コメント