表示されている金利より、支払う手数料のほうが大きいことがあります。
これまで、着実な積立や賢い銀行選びのお話をしてきましたが、私の資産形成の道も決して平坦なものばかりではありませんでした。
今回は、今でも思い出すと少し胸が痛む、私の「黒歴史」――外貨預金での失敗についてお話しします。
この記事の要点
- 2010年、記録的な円高のなか1ドル87.4円で100万円を米ドル定期に預けた
- 金利は年0.2%。しかし為替手数料は1ドルあたり1円だった
- 手数料は預入時のレートに対して約1.1%。金利では何年かけても取り戻せない水準
- 2年後、1ドル92.35円で解約。手元に残ったのは元本と微々たる利益のみ
- 得たのは利益ではなく、「自分にはこのやり方が向いていない」という確信
1ドル87円。「高金利」に目がくらんだあの日
2010年、日本は記録的な円高の中にありました。一方で、ネット銀行の画面に踊っていたのは「米ドル 年○%」という、円預金とは比較にならない魅力的な数字。
「これだけ円高なら、今ドルを買っておけば将来的に損はしないはず」
そんな安易な考えで、私は100万円というまとまった資金を投じる決意をしました。
この取引の記録
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 預け入れ | 2010年 / 1ドル87.4円 |
| 金額 | 100万円 → 11,441.65ドル(3か月定期) |
| 金利 | 年0.2% |
| 為替手数料 | 1ドルあたり1円 |
| 解約 | 2012年 / 1ドル92.35円 / 11,494.66ドル |
| 結果 | 元本と、微々たる利益のみ |
重くのしかかる「1ドル1円」の手数料
当時の私は、目先の金利に目がくらみ、非常に重要なコストを見落としていました。それは、預け入れ時にかかる「1ドルあたり1円」という高額な為替手数料です。
数字にすると、その重さがはっきりします。
1円 ÷ 87.4円 = 約1.1%。 一方の金利は年0.2%です。
つまり、手数料1回分を金利で取り戻すだけで5年以上かかる計算になります。しかも円に戻すときにも手数料がかかります。私が預けたのは3か月定期でした。
100万円分もの外貨を動かす際、往復の手数料だけで利益は簡単に吹き飛んでしまいます。金利で増える分よりも、銀行に支払う手数料や為替の変動リスクの方が圧倒的に大きいという現実に、預けてから気づくことになりました。
その後も円高の状態は続き、画面上の評価額が元本の100万円を下回るたびに、「相場の読みが甘かった」と後悔する日々が続きました。
第5回で書いた1000円の福袋と、構造はまったく同じでした。中身をよく見ないまま「お得そう」に反応してしまったのです。金額が1000円から100万円になっただけでした。
2年後の解約、そして「150円台後半」という現実
預け入れから約2年後の2012年。1ドル92.35円まで戻したタイミングで、私は「もう十分だ」と、逃げるように解約しました。
解約時の残高は11,494.66ドル。円に戻せば、手元に残ったのは預け入れた100万円と、微々たる利益のみでした。
しかし、本当の「衝撃」はその後にやってきました。
2026年現在、為替は1ドル150円台後半という歴史的な円安水準にあります。もしあの時、不慣れな外貨預金ではなく、もっと腰を据えた運用ができていれば……。
「自分には向かない」を知るための授業料
この苦い経験から、私は重要な教訓を学びました。
| 教訓 | 内容 |
|---|---|
| 「実質リターン」の冷徹な計算 | 手数料と税金を引いて、本当にプラスになるのか? |
| 相場の波を読もうとしない | プロでも難しい為替の動きに一喜一憂するのは、自分のスタイルではない |
| 「高コスト」な商品の回避 | 銀行の手数料がいかに運用効率を下げるか |
結局、私は外貨預金から完全に撤退しました。
「もっと持っていれば」という後悔よりも、100万円という大金を通じて「自分にはこのやり方は向いていない」と早めに気づけたことの方が、私にとっては大きな収穫でした。
この「黒歴史」を高い授業料として割り切ったことで、その後の私は、SBI証券などでの「低コストな投資信託」という、より確かな道を選ぶことができたのです。
外貨預金を検討する前に確認したい3つのこと
同じ失敗を避けるために、私が先に見ておくべきだったことです。
- 手数料を「金利の何年分か」に換算する — 私の場合は片道で5年分以上でした。この一手間で、預ける前に思いとどまれたはずです
- 往復のコストで考える — 買うときだけでなく、円に戻すときにもかかります。片道の数字で判断すると見誤ります
- 相場が読めなくても成立するか確かめる — 為替が動かなくてもプラスになるのか。相場頼みの前提なら、それは預金ではなく賭けに近くなります
よくある質問
Q. 外貨預金の為替手数料はどれくらいかかりますか?
私が2010年に利用した際は1ドルあたり1円でした。当時のレートに対して約1.1%にあたります。手数料の水準は金融機関や通貨、時期によって大きく異なるため、必ず利用前にご確認ください。
Q. 外貨預金はやめたほうがよいのでしょうか?
一概には言えません。私が失敗したのは、手数料を確認せず金利だけを見て判断したからです。コストを理解したうえで目的に合うなら、選択肢になり得ます。ただ私自身には向いていませんでした。
Q. 円高のときに外貨を買えば得をしますか?
私もそう考えて1ドル87.4円で買いました。しかしその後さらに円高が進み、評価額は元本を割り込みました。「もう十分に円高だ」という判断は、あてになりません。
Q. 失敗した投資は、いつ手放せばよいですか?
私は2年で撤退しました。結果だけを見れば、その後の円安まで持っていれば利益は出ていたでしょう。それでも、自分に合わない方法を続けるストレスから解放されたことに価値があったと思っています。
まとめ:金利の数字だけを見ない
外貨預金で私が見ていたのは金利だけでした。見るべきだったのは、手数料を引いた後に本当に残るものです。
100万円は高い授業料でしたが、この経験があったから「低コスト」を選ぶ目が育ちました。失敗を早く経験できたことが、結果として一番の収穫だったと今では思っています。
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※本記事は個人の経験に基づく内容であり、特定の金融商品を推奨・否定するものではありません。記載の金利・為替レート・手数料はいずれも当時のもので、現在の条件とは異なります。外貨預金は為替変動により元本を割り込む可能性があり、預金保険制度の対象外となる場合があります。ご利用にあたっては各金融機関の説明をご確認のうえ、ご自身の判断でお願いいたします。


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