信じていた前提が、データで崩れることがあります。
2022年11月、私は長年続けてきた投資戦略に大きなメスを入れました。つみたてNISAでの積立銘柄を、鉄壁の守りだと思っていた「8資産均等型」から、全世界株式、通称「オルカン」へと変更したのです。
この記事の要点
- きっかけは、2本の基準価額の推移を重ねて見たこと
コロナショックでは、両者が同じように急落していた- その後の回復局面では、オルカンが圧倒的に上昇した
- 「下では守れず、上では伸びない」なら、投じ続ける理由がない
- 積立先はオルカンへ一本化。ただし既存の8資産均等型は売却せず保有継続
衝撃の「基準価額」比較
変更のきっかけは、スマホサイトにある「ファンド比較」機能でした。
そこで、私が信じていた「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」と、勢いのある「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の基準価額の推移を重ね合わせてみたのです。
そこで目にしたのは、予想外の現実でした。
- 暴落時の動き:2020年のコロナショック時、両者は「同じように」急落していました。リスク分散しているはずのバランス型が、株式のみのオルカンと同様のダメージを受けていたのです
- 回復力の差:その後のリバウンド局面では、オルカンが圧倒的な上昇を見せたのに対し、バランス型はなだらかな回復にとどまっていました
期待と現実の、埋まらないギャップ
私が「8資産均等型」を選んでいた最大の理由は、暴落時のショック緩和(クッション材)を期待してのことでした。しかし、データが示した現実は残酷でした。
| 期待していたこと | データが示したこと | |
|---|---|---|
| 暴落時 | 債券やREITが下落を和らげてくれる | すべての資産が同時に売られた |
| 回復時 | (特に期待していなかった) | 株式ほどは戻らなかった |
| 結論 | — | 下では守れず、上では伸びない |
「守れていない」のであれば、積立はストップ。そう判断した私は、つみたてNISAの積立先を「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」に一本化することを決意しました。
※これは私が特定の期間のデータを見て下した判断です。資産分散の効果は局面によって現れ方が異なり、より長い期間で見れば違う結果になることもあります。どの配分が適しているかは、許容できる値動きの幅によって人それぞれです。
過去を否定せず、未来を最適化する
ただし、これまでの自分の歩みをすべて否定するわけではありません。
| 決めたこと | |
|---|---|
| 今後の積立 | 年40万円(毎月3万円+ボーナス月2万円)の枠を、すべてオルカンへ |
| 既存の資産 | これまで積み上げた8資産均等型は売却せず、そのまま保有を継続 |
これによって、過去の「守りの資産」は残しつつ、これからの資産形成は「世界の成長を最大効率で取り込む」という、非常に納得感のあるポートフォリオへアップデートされました。
なぜ今回は「売却」しなかったのか
第31回 信託報酬0.55%から0.15%へ|低コスト進化版シリーズにでは、同じ8資産均等型を売却しました。今回は売らずに残しています。矛盾しているようですが、理由は明確です。
| 第31回(2019年) | 第35回(2022年) | |
|---|---|---|
| 対象 | 旧シリーズの8資産均等型 | Slimの8資産均等型 |
| 問題 | 中身は同じなのにコストが高い | 中身そのものが方針と合わなくなった |
| 判断 | 持ち続ける理由がない → 売却 | 守りの資産としては意味がある → 保有継続 |
「コストが無駄」と「配分が好みでない」は、別の問題です。 前者は持っているだけ損をしますが、後者は役割が残ります。加えて売却には課税が伴うため、急いで動かす理由もありませんでした。
方針を見直すときの3つの視点
このときの判断を振り返ると、次の3つを踏んでいました。
- 思い込みをデータで確かめる — 「分散しているから下がりにくいはず」は、私の推測でした。重ねて見るまで、自分がそう信じ込んでいたことにすら気づいていませんでした
- これから入れるお金と、すでにあるお金を分けて考える — 積立先は変えても、既存分はそのまま。一度にすべてを動かす必要はありません
- 過去の選択を否定しない — 8資産均等型を選んだのは、当時の私にとって正しい判断でした。方針を変えることと、間違いを認めることは別です
よくある質問
Q. 8資産均等型とオルカン、どちらがよいのですか?
目的によります。 私は「暴落時のクッション」を期待して8資産均等型を選び、それが期待通りではなかったため変更しました。値動きの幅を抑えたい方には、債券を含む配分に意味があります。どちらが優れているかではなく、何を求めるかで選ぶものだと思います。
Q. バランス型は暴落時に守ってくれないのですか?
私が見た限りでは、コロナショックの局面では期待した緩和効果は見られませんでした。ただしこれは特定の時期の話です。すべての暴落で同じことが起きるとは限りません。
Q. 積立先を変えたら、既存の資産も売るべきですか?
私は売りませんでした。積立先の変更と、保有資産の売却は別の判断です。売却には課税が伴うこともあり、急ぐ理由がなければそのまま持ち続けるという選択もあります。
Q. 投資方針は途中で変えてよいのですか?
変えてよいと思います。第29回 掛金の所得控除と60歳まで引出不可の制約|iDeCoで自分年金でも書いた通り、放っておくのが正しいのは積立の「継続」であって、設定そのものではありません。 ただし相場の上下に反応して変えるのではなく、前提が崩れたときに変える、という区別は必要です。
まとめ:教科書に、自分のデータを重ねる
理論(教科書)に頼るだけでなく、自分の目でデータを確認し、自分の経験(コロナショック)を反映させて投資方針を修正する。
これこそが、長い年月をかけて私が身につけた「投資家としての自立」でした。
窓口で勧められるまま買っていた頃の私は、自分で確かめるという発想さえ持っていませんでした。14年かけて変わったのは、商品ではなく確かめ方だったのだと思います。
次回予告|第36回 5銘柄を売ってオルカンへ|投信お引越しと新NISAへの布石は、その集約をさらに進めた話です。毎月29万円を自動売却してオルカンへ移す計画を、わずか3か月で止めた理由をお届けします。
※本記事は個人の経験に基づく内容であり、特定の金融商品を推奨・否定するものではありません。文中の比較は私が特定の期間のデータを見て判断したもので、異なる期間では結果が変わる可能性があります。過去の値動きは将来の成果を保証するものではありません。投資信託は価格変動により元本を割り込む可能性があります。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。


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